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病気のお話シリーズ vol.14 “犬の前十字靭帯断裂 パート3” 2016.12.15
今回の病気のお話しブログは、整形外科の戸次先生から
『犬の前十字靭帯断裂 パート3』に関するお話しです
今迄の“パート1”と”パート2”も文字の上をクリックすると
ご覧いただけます
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ネオベッツVRセンター整形外科の戸次です。
今回の“病気のお話”は、『犬の前十字靭帯断裂 パート3』です。
前回までは、初診時に実施する整形外科的検査(視診、触診)
そしてX線検査(レントゲン)といった無麻酔で実施可能な検査に
ついてお話ししました。
今回は、そこから一歩踏み込んだ麻酔下検査として、関節鏡検査と
CT検査についてお話しします。
(麻酔をかける前には、ホームドクターもしくはVRセンターで
血液検査を行い、麻酔をかけても問題ないかどうかを確認する
必要があります。)
関節鏡検査は、直径1.9〜2.3mmのスコープ(動物の大きさにより選択)を
関節内に挿入し観察するという検査であり、前十字靭帯断裂の仮診断が
下された動物に対して、基本的にルーチンで行っています。
利点
・関節内構造部を拡大観察できること
・前十字靭帯の変性や部分断裂といった初期病変も把握し
確定診断が可能なこと
・低侵襲で術後の回復が早いこと
欠点
・関節外(骨、筋肉、関節包の外側)や膝関節尾側の観察が困難なこと
・技術習得まで時間がかかること、高額機器など
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※実際の関節鏡検査の流れを解説していきます
麻酔をかけた後に股関節から足先までの
毛刈り及び消毒を行います
次に手術台に保定し、滅菌ドレープで
手術部位以外を全て覆います
皮膚からの細菌が手指や器具に付着し、術野が汚染されないよう
プラスチックドレープというラップのようなものを皮膚に貼り付けます。
下の写真、赤点線で囲んでいるところに貼っています。
排泄ポート、カメラポート、器具ポートを作成し、
関節内の観察そして半月板損傷があれば
治療を行います
語句説明
排水ポート
関節鏡検査中は、関節内には還流液を常に流し関節内を
洗浄しながら視野の確保を行います。
その時の汚れた液体を排泄するための部位を表します。
カメラポート
術者の目の代わりとなる、小さなカメラを入れる部位を表します。
器具ポート
術者の手の代わりとなる器具を入れる部位を表します
関節鏡所見①
滑車溝に発生した骨棘(こっきょく)
(骨の一部が骨端部付近で棘状に突出しています)
関節鏡所見②
損傷していない十字靭帯(画面は後十字靭帯)は、
張りがあり、キラキラと輝いている
関節鏡所見③
断裂した前十字靭帯
関節鏡所見④
内側半月板をプローブという器具で触知し、
損傷の有無を調べている
関節鏡所見⑤
内側半月板の後角が損傷し、頭側に逸脱している
下の写真は、上の写真の損傷箇所を囲っています
術者、助手、機械出し、外回り、麻酔係が
各自の役割を行い、短時間で正確な手術を
実施するよう努めます
関節鏡検査にかかる時間は、動物の大きさや関節内の状態により
変わりますが、おおよそ10~35分となります
“検査”と名前は付いていますが、ご覧の通り関節鏡検査は
“手術”であり、通常は、関節鏡検査直後に膝関節を安定化する
手術も同時に実施していきます。
(こちらは、パート4でお話しします)
CT検査は、前十字靭帯断裂の検査として、ルーチンに行っている
検査ではありませんが、整形外科的検査やX線検査で腫瘍を疑う
所見があった場合には、必須検査となります。
特に、腫瘍が多い犬種や前十字靭帯疾患にかかりにくい犬種が、
後肢跛行を主訴に来院し、膝関節に病変があった場合は、
注意が必要です。
なぜなら腫瘍性疾患の治療方法や予後は、単なる前十字靭帯断裂と
全く異なるためです。
左:レントゲン 右:CT検査で骨断面を観察すると
骨融解が生じていることがわかる(赤点線で囲んだ領域)
左:正常な右後肢
右:膝関節周囲に腫瘍がはびこっていることがわかる
CT検査の特徴は、X線を用いて構造物を断面状に観察することが
可能なため、関節鏡検査では観察できない、関節周囲組織や
骨断面の観察に適しています。
CT検査で腫瘍であることが分かれば、整形外科から腫瘍科へ
バトンタッチし、治療を行ないます。
次回パート4では、前十字靭帯断裂に対する治療について
解説していこうと思っております