ブログ
5/27開催 VRCグランドカンファレンス 2017.6.13
VRセンターでは毎月、第4木曜日の夜
“VRCグランドカンファレンス”を開催しています。
VRセンターの先生が講師を務め、様々なテーマで
関西の動物病院の先生方と共に勉強会を行っています。
先月のVRCグランドカンファレンスは特別企画
5/27(土)、ベーリンガーインゲルハイム
ベトメディカルジャパン㈱様との共催で
福岡のペットクリニック ハレルヤの総院長 平川 篤先生
(獣医循環器認定医)をお招きし開催しました。
テーマは『犬の心疾患における新たな知見とこれからの臨床応用』
86名の先生方にご参加頂き大盛況のカンファレンスとなりました
参加していた望月先生にどんなカンファレンスだったか
聞いてみました
今回のVRCグランドカンファレンスではペットクリニックハレルヤの
総院長でいらっしゃいます平川 篤先生をお招きし、最近報告された
「無徴候だが心拡大のある慢性房室弁疾患に対する
ピモベンダンの効果:EPIC試験」
という研究についてご解説いただいた上で、犬の心疾患に対する
実際の治療についてご講演いただきました。
ここでいう慢性房室弁疾患とは、日本では一般的に
僧帽弁逆流症(MR)あるいは僧帽弁閉鎖不全症(MI)と
呼ばれることが多い、犬で最も多い後天性の心疾患のことです。
僧帽弁とは
左心房と左心室を分ける心臓の弁で、
心臓の中の血液の流れを一方通行にする役割があります。
この弁に粘液腫様変性という変化が起きると
弁が厚くなり、弁を固定している腱索という強い糸のような
構造物が伸びたり、切れてしまったりします。
すると
僧帽弁をうまく閉じることができなくなり、心臓の中の
血液が逆流し、血液を全身にスムーズに送り出すことが
できなくなります。
病気が進行すると
●肺に水が貯まったり(肺水腫)
●疲れやすくなる(運動不耐性)
などの徴候が現れ、この状態をうっ血性心不全と呼びます。
犬のうっ血性心不全はその重症度で次のようなステージに
分類されています
下に行くほどステージが進行する、つまり病気が
重くなることになります。
心拡大とは心疾患の進行に伴い心臓が大きくなることです。
ステージA : 心疾患のリスクがある。心臓の構造に異常はない。
ステージB1 : 心疾患はあるが心拡大はない。
ステージB2 : 心疾患があり心拡大もある。
ステージC : うっ血性心不全の徴候が現在ある、あるいは過去にあった。
ステージD : 薬による治療で改善しない難治性のうっ血性心不全。
(犬のうっ血性心不全分類に関するACVIMの統一見解より)
写真① 正常な犬の胸部レントゲン:心拡大は認められない
写真② 僧帽弁閉鎖不全症(ステージB2)の
犬の胸部レントゲン:顕著な心拡大を認める
ピモベンダンは
●心臓の収縮力を上げる作用
●血管を拡張させる作用
がある心疾患治療薬です。
これまでの研究では、ステージCの犬にピモベンダンを投与すると
生存期間が延長することが報告されていましたが、ステージB2の
犬に対する効果はわかっていませんでした。
今回平川先生に御解説いただいた
EPIC試験とは
ステージB2の犬に対するピモベンダンの効果を検討したもので、
非常に科学的信頼性の高い研究です。
このEPIC試験により、ステージB2の犬にピモベンダンを投与すると、
投与しなかった犬に比べ、うっ血性心不全に至るまでの期間
(ステージC以上に進行するまでの期間)
もしくは心疾患が原因で亡くなってしまうまでの期間が約15ヶ月間
延長することが明らかになりました。
この研究結果から
ステージB2の僧帽弁閉鎖不全症の犬に対して、
ピモベンダンの内服を開始するという新たな選択肢が
増えたことになります。
講演の後半では、
平川先生が実際に治療された症例を提示していただき、
僧帽弁閉鎖不全症の犬の具体的な治療方法について
ご解説頂きました。
平川先生はご講演の中で、
僧帽弁閉鎖不全症と診断したら
●心拡大があるかレントゲン検査と超音波検査で
正確に評価する必要がある
●病気の進行具合を評価するためには定期検診
(可能であれば3ヶ月に1度、少なくとも半年に1度程度)が
重要であることを強調されていました。
このブログを読まれている方の中にも、主治医の先生に
すでに愛犬が心疾患をもっていることを指摘されている方も
いらっしゃるかと思います。
「うちの子は元気だからまだ治療しなくても大丈夫」と
思い込まずに、検査や治療の必要性について主治医の
先生にご相談されてみてはいかがでしょうか。