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病気のお話シリーズ vol.8 “犬の前十字靭帯断裂 パート2” 2015.11.30
今月の病気のお話は、整形外科の戸次先生からです
前回7月に、犬の前十字靭帯断裂 パート1をお送りした続きのお話です。
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ネオベッツVRセンター整形外科の戸次です。
今回の“病気の話”は、『犬の前十字靭帯断裂 パート2』です。
パート2では、前十字靭帯疾患の診断をお話しします。
前回も視診や触診に関しては、簡単に触れましたが、
患者様がVRセンターに初めて来院され、どのような検査を行い
診断するのかを、実際の診察の流れで解説します。
まず大型犬であれば駐車場(雨の日は室内)
小型犬は診察室内で歩様や姿勢を観察し、
どの程度の症状かまた他の問題がないかどうかを確認します
次に触診ですが、まずは起立した状態で膝関節の腫れや
大腿骨と脛骨の位置関係を優しく触ります
そして、前十字靭帯が機能しているかどうかの徒手検査として
脛骨圧迫試験や脛骨前方引き出し兆候の有無を確認します。
この時に痛みを発現することも多いため、できるだけ1回で
終わらせようとがんばりますが、性格が怖がりやナーバスな場合は
緊張して膝関節の不安定性を検出しにくいので、リラックスできるよう
オーナー様にも頭を撫でてもらったりして協力していただきます
膝関節触診風景
(左右の膝関節の腫れや脛骨前方突出を確認している)
膝関節触診風景
(立位での脛骨圧迫試験)
触診の次は、X線検査を行います。
X線検査の目的は、関節の変形具合(骨関節症の観察)
対側肢にも同様の問題が隠れていないかどうか
腫瘍性疾患がないかどうかの確認を行うことです。
前十字靭帯部分断裂の初期は、触診でもわからないことが多く
X線検査で疑診することが重要となります。
X線検査は、2~3人で動物を保定し、膝関節の正面方向と
側方向からの2方向を左右後肢で撮影します。
診断に用いるX線画像は、通常無麻酔で撮影します。
ただし、手術計画を立案するX線画像は麻酔下で撮影した画像を用います。
X線検査風景
(うつ伏せで膝関節を撮影しているところ)
膝関節X線画像
この時点で、多くのケースにおいて前十字靭帯断裂
(部分断裂を含む)の診断が下されます。
これらの検査結果をふまえて、次のステップとなる
関節鏡検査及び前十字靭帯の治療方法、予後などの
説明をさせていただき、初診当日の診察が終了となります
次回パート3では、麻酔下検査として関節鏡検査や
CT検査を説明していこうと思います