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病気のお話シリーズ vol.9 “胆嚢粘液嚢腫” 2016.1.21
今月の病気のお話ブログは、総合診療科の森下先生から
『胆嚢粘液嚢腫』に関するお話しです
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総合診療科の森下です。
本日は胆嚢粘液嚢腫という病気をご紹介させていただきたいと思います。
胆嚢とは
体の中にある胆汁という肝臓で作られる消化液をためておく袋です。
その胆嚢の中に胆汁でなく、ゼリー状の粘液物質が貯留することで
胆嚢が拡張し、かつ胆嚢の中に胆汁がほとんど貯留できなくなった状態
それが「胆嚢粘液嚢腫」です。
病気を理解するために胆汁の流れを理解していただきたいので
もうすこしややこしい説明を致しますと・・・・・
肝臓で作られた胆汁は
①の径路を通って黒で囲った黄色い管総胆管に合流し
②の胆嚢管を通って胆嚢に貯留します。
そして腸で胆汁が必要となったときに
③、総胆管を通って腸に流れ込む。
これが正常な胆汁の流れです
胆嚢粘液嚢腫の状態では
②への流れは遮断されますが
③を介して腸に胆汁が流れていれば
無症状であることも多いです。
しかし炎症が生じたり、あるいは胆嚢の中のゼリー状物質や
胆石が総胆管に詰まっていまいますと状態がぐっと悪く
なってしまいます
急性の嘔吐や発熱、黄疸などで見つかる場合が多く、
治療介入が遅れた場合には最悪死の転帰をたどることもあります。
状態が悪くなった原因は胆嚢粘液嚢腫なのですが、
状態の悪さは、胆嚢炎や、胆嚢破裂、総胆管閉塞、
膵炎などの併発疾患の影響が非常に大きいというのが
この疾患の特徴になります。
<無症状の胆嚢粘液嚢腫>
<周囲に炎症が波及した胆嚢粘液嚢腫>
<黒いもの(ゼリー状の胆泥であったり
胆石であったり)により総胆管閉塞を起こし、
肝管の拡張と胆嚢破裂を起こしている模式図>
実際の治療に際しては
血液検査、エコーおよびCTによる術前検査を行い
全身状態の判断、併発疾患の有無、状態を明らかとしたうえで
タイミングを見て外科手術を実施します。
内容としては
粘液状物質が貯留する胆嚢を切除する
総胆管の洗浄を行う
総胆管内の結石を除去するなど
いくつかのバリエーションがあります。
実際に治療したわんちゃんの写真をご紹介していきます。
一部手術中の写真もあるので、苦手な方はこれ以降はご遠慮ください
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胆嚢破裂のCT画像になります
頭側で破れていると判断致しました
写真は手術中の写真です
金属の鉗子で右にひっぱっているものが胆嚢
その左側の黄色いものは破裂した胆嚢から飛び出てきた
ゼリー状物質です。
左が頭側です。
切除した胆嚢(向かって右)です
慢性の胆嚢炎が生じていたことを思わせる
胆嚢壁の肥厚が観察されます。
左にある黄色いものは飛び出ていたゼリー状物質です。
手術を含め、術前、術後の内科治療の甲斐あって、わんちゃんは
元気に帰っていただくことができました
胆嚢粘液嚢腫は内科的なサポートも重要なポイントとなってきます。
内科治療中は多くの場合一進一退となりわんちゃん、家族の方
そしてスタッフもきりきりとした緊張が続きます
大変ではありますが、乗り越えれば元気に過ごせる日常を
取り戻すことができるために、やりがいを感じつつ常々
診察に携わる日々なのであります。