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病気のお話シリーズ vol.10 “動脈管開存症”                             2016.2.29

今月の病気のお話ブログは、総合診療科の澤木先生から
『動脈管開存症』に関するお話です

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総合診療科の澤木です。
今回は「動脈管開存症」という病気をご紹介させて頂きます。

動脈管開存症(PDA)とは
生まれるまで(胎生期)

赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいる間、呼吸をしません。
お母さんの胎盤から酸素を取り込むため、赤ちゃんは出生まで
心臓から肺への血液の流れを殆ど必要としないのです。
よって、無駄な回り道をしない様にするため、大動脈と
肺動脈という太い血管同士をつなぐ「動脈管」という血管が
生まれるまで、どの子にも存在しています。



生まれた後(出生後)

生まれた後、赤ちゃんは肺を使って酸素交換をしなければならなくなり
自分で呼吸し始めると同時に、動脈管はすぐに閉鎖されてしまいます。



生まれた後も動脈管が開いたままの状態なのが、PDAという病気です。

少し細かいお話になってしまいますが、動脈管が開いた状態のままだと
大動脈という太い血管から全身に流れるべき血液が、肺動脈に流れて
しまいます。
結果、肺や心臓(左心房・左心室)に負担が掛かってしまいます


この病気自体は、雌での発生が多く(23)、チワワ、トイ・プードル
ポメラニアンなどの小型犬に好発すると言われており、猫は比較的
少ないと言われております

【飼い主さんから見て気付く異変(臨床症状)
はじめは全く症状を示さない子もいますが、心臓の機能が徐々に
低下してくると心臓への負担による咳、呼吸異常(チアノーゼ・
呼吸促迫)、元気がない、運動を嫌がる
などの症状が出てきます。

ワクチン接種や健康診断などで偶然見つかることもあります。
1歳までに70%が左心不全(=心臓の機能低下)を発症すると
言われています。

【診断】
心臓の聴診を含む一般身体検査、レントゲン検査、超音波検査
CT検査
などを用いて動脈管が存在することを確認します。
特に、聴診では「連続性雑音」と呼ばれる特徴的な雑音が聴こえます
はじめて獣医さんに連れて行くと、
獣医さんが聴診器を当てるのは
この様な生まれつきの心臓病を見つけるためです。
最終的に、超音波検査などを用いて、血液の流れる動脈管を
確認する
ことで、診断されます。

【治療】
動脈管が残った状態である事が、根本的問題であるため、外科治療が
可能で
あれば、手術が勧められます。
手術方法は、開胸して、閉じていない動脈管を直接閉鎖(結紮)する
方法が取られます。
ただし、症状が進行している場合は、手術可能な時期を逃してしまい
手術適応外となるケースもあります


【さいごに】

PDAは、「今は元気だから…」と、手術を遅らせていると病気が
進行して
しまい、手術ができなくなってしまう可能性のある病気です

頑張って手術を乗り越えられれば、他の犬と同様の生活が可能であり
寿命を全うすることができる未来に繋がる手術です

早期発見・早期治療が大事な病気であり、同時に、しっかりとワンちゃんを
診察してくれる「かかりつけの先生」の存在が非常に大切だと思っています。

“病気のお話シリーズ vol.10 “動脈管開存症”                             2016.2.29” への1件のコメント

  1. 笠剛暢 より:

    ご相談がメールしています。我が家の愛犬ポメラニアンメス一歳の女の子なんですが昨日いつも行っている病院で動脈管開存の診断を受けました。状態としては肺水腫が軽度であり心房の拡張がみられます。心膜も薄く手術成功確率は40%〜50%と言われました。その他に病気はみつかりませんでした。1番の懸念は体力が持つかどうかわからない所で手術にふみきるべきか悩んでおります。アドバイスを頂けたらと思います。この子は3週間前程前に保護してくれて方から譲り受けた子です。

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