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病気のお話シリーズ vol.18 “骨肉腫” 2019.4.17
今回の病気のお話ブログは総合診療科の武内先生から
『骨肉腫』に関するお話です
よく聞く病気ですが、詳しくはご存知ない方も多いのではないかと思います。
分かりやすく解説していますので、是非読んでみてください。
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総合診療科の武内です。
今回は、かかりつけの病院でも診断、治療される機会が多い
犬の『骨肉腫』という病気について説明させていただきます。
骨肉腫とは?
まずはじめに、『肉腫』とは、悪性腫瘍、いわゆる『がん』の一種です。
『骨肉腫』は、犬の骨に発生する悪性腫瘍で最も多くみられるもので、
骨腫瘍全体の90%以上を占めると言われます。
どんな子のどんな所にできるの?
大型犬や超大型犬に多くみられますが、小型犬でも見られることがあります。
全身のどの部位でも発生する可能性はありますが、特に四肢での発生が多く、
図の位置でよく見られます。
どんな症状が出るの?
骨融解(腫瘍に骨がとかされること)により、痛みが生じます。
そのため、発生部位によって跛行(足をうまくつかない、痛そうに歩く様子)が
見られることがあります。
骨融解の程度によっては骨折が起こったり、激しい痛みを訴えることがあります。
どうやって診断するの?
レントゲン検査やCT検査で病変を確認し、細胞診(細い針で細胞を採取)や
組織生検(太い針で組織をくり抜く)で診断することが多いです。
ただし、病変が小さい場合は骨の生検は困難となることもあるため、
骨肉腫が疑われているのに検査で検出されなかった場合には、
本当に腫瘍ではないのか、組織の採取が難しかったからなのか、
結果の解釈には注意が必要です。
橈骨に発生した骨肉腫のレントゲン画像
骨がとけ、周囲の組織が腫れています。
同じ症例のCT画像
骨融解がよりはっきりとわかります。
どんな特徴があるの?
非常に転移しやすいことが特徴で、発見時には90%以上の患者さんで
すでに身体のどこか(肺や骨など)に転移が起きているとされます。
ただし、レントゲン検査やCT検査などで検出されないほど小さな
病巣であることが多いです。
そのため、診断の時点では画像検査で転移の所見がなくても、
微小な転移がある前提で治療方針を立てなければいけません。
どうやって治療するの?
span> 治療の戦略は原発巣(おおもとの病変)に対するもの、転移巣に対するもの、
疼痛に対するものなどに分けて、患者さんの状況に応じて考える必要があります。
原発巣に対する治療
・腫瘍の外科的切除(断脚など)
・患肢温存手術
・放射線治療
転移巣に対する治療
・化学療法(抗がん剤など)
疼痛に対する治療
・鎮痛薬
・ビスフォスフォネート製剤(骨融解を抑える薬です)
・放射線治療
予後(病気がたどる経過)は良いの?
四肢の骨肉腫の場合、原発巣の手術と抗がん剤による治療をした場合の
1年生存率は約50%、2年生存率は20%とされるため、一般的には予後は
良くないと考えられます。
ただし、小~中型犬の場合は大型犬と比較して予後が良い、
四肢の中では上腕骨が最も予後が悪い、下顎に発生した骨肉腫は転移しにくい、
など、それぞれの患者さんの状況によって違なります。
さいごに
骨肉腫は、手術や抗がん剤など積極的な治療を行うことにより生存期間が
延びることがわかっている腫瘍の一つです。
骨肉腫が疑われる、または診断された場合には、早期診断、早期治療の
実施が勧められます。
この病気を疑う症状が見られる場合には、まずはホームドクターの先生に
是非相談してみて下さい。