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病気のお話シリーズ vol.7 “てんかんと脳の病気” 2015.10.29
今回の病気のお話しシリーズは神経科の王寺先生から
『てんかんと脳の病気』に関するお話しです
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神経科で診察する機会の多い病気のひとつに“てんかん”があります。
てんかんとは発作が繰り返し起こる脳の病気です。
ヒトでは100人に1人くらいが発症するといわれ、
イヌでも多く遭遇します(ネコでは稀です)
今回はこの“てんかん”について少し解説します。
まずてんかんの症状として現れるのが“てんかん発作”です。
一般的には意識が無くなり、泡を吹き(実際には多量のよだれ)、
全身が痙攣する発作(全般性発作と呼ばれる)が知られていますが、
手足が硬直し動かせない、顔や特定の部分の筋肉けいれん、
ハエを追うような行動異常など様々な意識がある状態で生じる発作
(部分発作と呼ばれる)も多くあります。
《 発作のイメージ 》
全般性発作では脳細胞全体が興奮し 部分発作では脳細胞の一部が興奮し
激しいけいれん発作が観察されます 局所的な不随意運動(制御できない運動)が
観察されます。
この“てんかん発作”を繰り返し起こす病気が“てんかん”といわれ、
病気の特性から“特発性てんかん”と“症候性てんかん”に分けられます。
特発性てんかん は
“検査をしても脳に異常がないのに発作が起こる病気=原因不明のてんかん”で
一般的に2歳から5歳ぐらいの間に初めての発作が起こります。
発作の症状は全身性のけいれん発作から部分発作まで様々ですが、
この病気の特徴には
てんかん以外の症状が観察されない
発作時以外に神経障害が認められない 事が挙げられます。
特発性てんかんでの検査の目的は、脳に異常がない事を確認することで多くの場合、
MRIと髄液検査が行われます。
MRI検査では、脳に見て分かる異常がないこと、
髄液検査では脳炎や髄膜炎が無いことが確認されます。
これらの検査で無事に異常がないことが確認された場合には、
治療としててんかんコントロールが行われます。
てんかんコントロールではてんかん自体が完治するものでは無いとの考えから、
投薬によって発作回数をうまく調節することが目標とされます。
動物では、ひと月に1度異常の発作がある場合には投薬の対象とされ、
多くの場合、生涯長期間の投薬が必要となります。
長期間の投薬については抵抗があるかと思いますが、発作が頻回で起こること自体が
脳には悪影響になりますので、適切な投薬が推奨されます。
症候性てんかん は
“脳に原因となる病気がある発作”です。
この原因は、水頭症に代表される形態・形成異常(奇形)から
脳炎・脳腫瘍・脳梗塞などあらゆる脳(特に大脳)の病気が対象となります。
その為、好発年齢も全ての年齢が対象となり特に
発作以外の症状(ふらつきや旋回など)が観察される場合や
平常時でも神経障害(麻痺など)が観察される場合には、
必ず原因疾患の診断が必要となります。
この場合も同様にMRIや髄液検査が行われますが、
その目的は“病気を見つける為の検査”となります。
検査により診断が得られた場合には、その疾患に合わせた治療
(投薬や手術など)が必要となります。
脳腫瘍でも発作を起こすことが多くあります。
症候性てんかんの中にも発作以外の症状が無い症例もあり、
症状や身体検査での完全な見極めは困難です。
その他にも体の中の異常(肝疾患など)でも、
てんかんが起こる病気は多くあり、てんかんのような症状が
観察される場合には必ず、動物病院へ相談していただき、
検査・投薬の指示を仰ぐようにしてください。
また、てんかんの診断には症状の観察が重要です。
てんかんで動物病院を受診される場合には、
お手持ちの携帯・スマホでてんかん症状の動画を撮影し
受診いただくとよりスムーズな診察が行えると思います